無塩の平茸

火の鳥・乱世編で木曾義仲

「もう酒はいい!!めしだ」

「無塩の平茸で湯づけが食いたい!!」

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と。

そういえばと思い太宰の津軽でも、

 

 

東京の人は、ただ妙にもつたいぶつて、チヨツピリづつ料理を出すからなあ。ぶえんの平茸ではないけれど、私も木曾殿みたいに、この愛情の過度の露出のゆゑに、どんなにいままで東京の高慢な風流人たちに蔑視せられて来た事か。「かい給へ、かい給へや。」とぞ責めたりける、である。
 後で聞いたが、Sさんはそれから一週間、その日の卵味噌の事を思ひ出すと恥づかしくて酒を飲まずには居られなかつたといふ。ふだんは人一倍はにかみやの、神経の繊細な人らしい。これもまた津軽人の特徴である。生粋の津軽人といふものは、ふだんは、決して粗野な野蛮人ではない。なまなかの都会人よりも、はるかに優雅な、こまかい思ひやりを持つてゐる。その抑制が、事情に依つて、どつと堰を破つて奔騰する時、どうしたらいいかわからなくなつて、「ぶえんの平茸ここにあり、とうとう。」といそがす形になつてしまつて、軽薄の都会人に顰蹙せられるくやしい結果になるのである。Sさんはその翌日、小さくなつて酒を飲み、そこへ一友人がたづねて行つて、
「どう? あれから奥さんに叱られたでせう?」と笑ひながら尋ねたら、Sさんは、処女の如くはにかんで、「いいえ、まだ。」と答へたといふ。
 叱られるつもりでゐるらしい。

太宰治 津軽

 

なんて出てたのを思い出した。

読んだ当時はどんな料理かと思って調べてみたけど結局意味を理解していなかった気がする。

「ぶえん」は元々飛騨の方言らしいがネットの辞書では

ぶ えん 【無塩】

塩気のないこと。生(なま)のままで塩漬けしてないこと。特に,魚介類が新鮮であること。 「何も新しきものを-といふと心得て/平家 8
鮮魚生魚。 「こいつは-だ/滑稽本膝栗毛 3
無垢なこと。うぶな人。 「 -のお娘の手いらずを/人情本梅児誉美 
中国,斉の宣王夫人が醜く,出身地の地名から無塩女と呼ばれたことから〕 醜い女醜女。 「 -のお多福目出たい先払/柳多留 82

 

との事で初出は平家物語らしいが結局木曾が無塩の意味を履違えて使ってしまい太宰がその逸話を津軽人が誤解される喩えとして持ち出した、との理解で良いのだろうか。。。

 

平家物語 - 巻第八・猫間 『ある時、猫間中納言光隆卿といふ人…』 (原文・現代語訳)

 

ところで平茸ってどんなんやと思ったが余り馴染みない。

今昔物語にも記述はあるらしいが。

ヒラタケ - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d2/Pleurotus_ostreatus%2C_Japan_1.JPG/800px-Pleurotus_ostreatus%2C_Japan_1.JPG

 

それにしても腹が減った。