仮面

自分には手に余る程の魅力を持っていた彼女は到底高嶺の花の存在で不釣り合いなのは十分に分かっていた筈だった。

それでも柄にもなく四百四病の外の病を患い、少しでも可能性があるかも知れないなどと勘違いした努力は当然の如く徒花となり、いざ現実を突きつけられた時には最早生きる気力も失っていたのであった。

レノンを暗殺したチャップマンや金閣寺を放火した林を自身に投影しああいっそ手に入らないのならば。。。と冗談交えに友人と語らい笑いあったが内心はとても心細かった。

第二の故郷をいざ離れるとなると当初はあれだけ不満をもっていた我が茅屋も愛おしく感じられ荷物を梱包し徐々にがらんとして行く様はどこかアルジャーノンが憑依した様に感じられた。最後に良く訪れた近所の酒場で缶チューハイを飲んだ時は思わず涙してしまい誰にも見られまいと急いで飲み干し、酔った。

丁度火の鳥を読んでいた事もあり、このプロセスは一種の輪廻なのだろうかとか、末には三輪山を登拝した際にも麓から神格化された山頂、そしてまた現世の麓に戻って来るのは一種の転生なのだろうか、とか馬鹿気た事を考えていた。

三輪明神狭井神社近く、池の畔には三島由紀夫の石碑があった。丁度豊穣の海執筆の際訪れ揮毫した文が刻まれいていたのなんとなく思い出し夜更けにこんな駄文を綴るのであった。

 

明日はヨブ記とクシュナーを読み進めようと思う。

あと金閣寺の文庫は借りて読んだので本棚にない事を半年に1回思い出しては買いなおさなければと毎度後悔する

 

つづく